『万引き家族』

映画館で鑑賞したのは随分昔だが、ふと思い立って再度見返した映画を紹介する。
「一番好きな映画は?」と聞かれたなら、今のところ、僕はこの作品をあげるだろう。
是枝裕和が監督をした、『万引き家族』だ。

タイトルから衝撃的な作品で、実際、賛否両論ははっきり分かれている。
決してハッピーエンドとは言えず、正直胸くそ悪いラストシーンでもあった。
しかし、見終わった後のなんとも言えない余韻が、僕のこれまでの映画人生ではなかなかないものだった。
多くを語らず余白を残し、観た者に解釈を委ねるところがとても多い作品かもしれない。

こんなことをするのは野暮だと思われるかもしれないが、「他の人はどう解釈したのだろう?」と、鑑賞後にはいろんな人のレビューを見漁り、是枝監督が書いた『万引き家族』の書籍版まで購入した。
ちなみに書籍については、やはり是枝監督は本作家ではないので、読み物としては評価されるものではないかもしれないが、映像の中で「こんな風に読み取ってもらいたい」という監督の狙いが言葉になっているので、「ああなるほどそういうことか」とわかる部分も多く、非常に興味深かった。

また、この作品を素晴らしい作品たらしめている要因の一つは、役者陣の高い演技力だ。
主役のリリー・フランキーから子役にいたるまで、一人残らず素晴らしい演技だった。
その中でも、終盤、安藤サクラが泣くシーンは、息を呑んだ。
カンヌ国際映画祭にて審査員のケイト・ブランシェットも高く評価したという。

そして、実は僕がこの作品を映画館で観た少し後に、出演者の樹木希林の訃報が報じられた。
作中で、自分の死期を悟って「ありがとうございました」と口にするシーンがあるのだが、実はこれは彼女のアドリブだったのだそう。(メイキングで知った)
彼女がいったいどんな想いでこの台詞を口にしたのだろうと思うと、胸が締め付けられる。

日本の様々な社会問題が題材にされていることもあり、好みが分かれる作品かもしれないが、是非多くの人に観てほしい。